減算合成の仕組み

シンセサイザーを使用したサウンド作成には、さまざまなアプローチがあります(その他の合成方式を参照)。シンセサイザーのモデルごとにさまざまな違いがありますが、たいていは、減算合成の原理に基づく基本的に類似したアーキテクチャおよびシグナルフローを採用しています。

伝説によれば、ミケランジェロは、石を削ってダビデ像を作るにはどうすればいいかと尋ねられ、「ダビデの形に見えない部分を削り落とすだけだ」と答えました。

減算合成の仕組みも基本的にはこれと同じで、不要な音声成分をフィルタで取り除くという方法です。つまり、基音と関連する倍音で構成される周波数スペクトルを部分的に取り除きます。

減算合成の手法は、さまざまな周波数スペクトルの波形を生成する単純なオシレータを使用して、アコースティック音源に近いものを作り出せるという考え方に基づいています。信号はオシレータからフィルタに送信されます。これにより、音源本体内の周波数に依存する損失とレゾナンスが示されます。フィルタ処理された(またはフィルタ処理されていない)信号は、シンセサイザーのアンプセクションで経時的に変化します。

実物の楽器が持つ独特の音色、イントネーション、および音量といった特性は、エミュレート対象の楽器の自然な動作に似た方法でこれらのコンポーネントを組み合わせることで、理論的に再現可能です。

ただし、実際には、減算方式のシンセサイザーは、実物の楽器をエミュレートするには理想的なものではないため、合成クラリネットの音を聞いて本物と思う人はいません。EXS24 mkII などのサンプラーで何ギガバイトものサウンドライブラリを使用できる現在は、なおさらです。

減算合成シンセサイザーの本領は、独自のサウンドパレットにあります。

アナログシンセサイザーおよびバーチャルアナログシンセサイザーは、すべて減算合成によって音を作り出します。

減算方式シンセサイザーコンポーネントの概要

大半の減算方式シンセサイザーのフロントパネルには、類似の生成および処理モジュールがまとめられており、加えてモジュレーションおよび制御用モジュールがいくつも含まれます。通常、信号の生成および処理モジュールは、現実のシンセサイザーのシグナルフローに合わせて左から右に実行されます。

Figure. Basic subtractive synthesizer signal flow diagram.
信号の生成および処理用コンポーネント
  • オシレータ: 基本信号を生成します。これは通常、倍音を豊富に含む波形です(オシレータを参照)。多くのシンセサイザーには、複数のオシレータが含まれます。
  • フィルタセクション: 周波数スペクトルの一部をフィルタ処理(除去)して、基本信号に変更を加える場合に使用します。多くのシンセサイザーには、すべてのオシレータ信号に広く適用されるフィルタが 1 つ用意されています。マルチオシレータシンセサイザーには複数のフィルタが用意されており、各オシレータ信号をさまざまな方法でフィルタ処理することが可能です(フィルタを参照)。
  • アンプセクション: 信号のレベルを時間経過に沿って制御する場合に使用します。アンプには、エンベロープと呼ばれる機能が備わっています。エンベロープは複数の要素で構成されており、サウンドの序盤、中盤、終盤の各部分のレベルを制御できます。通常、単純なシンセサイザーには、オシレータ(およびフィルタ)を経時的に制御するためのエンベロープが 1 つ存在します。より複雑なシンセサイザーには、複数のエンベロープが含まれます(アンプセクションのエンベロープを参照)。
モジュレーションとコントロール用のコンポーネント
  • モジュレータ: 信号の生成および処理用コンポーネントをモジュレートする場合に使用します。たとえば、モジュレーションをマシンベースにする(シンセサイザーコンポーネントにより自動生成する)ことも、モジュレーションホイールを使って手動で有効にすることもできます。大半のシンセサイザーでは、LFO(低周波オシレータ:Low Frequency Oscillator)という名前のコンポーネントを使って、信号をモジュレートする波形を作り出します。モジュレーションを参照してください。
  • グローバルコントロール: ノート間のグライド、ピッチベンド、モノフォニックまたはポリフォニック再生など、シンセサイザーの全体的なサウンド特性に影響を与えます(グローバルコントロールを参照)。

オシレータ

シンセサイザーのオーディオ信号は、オシレータにより生成されます。通常、タイプや倍音構成(含まれる倍音の量)の異なる複数の波形を組み合わせて選択します。選択した波形の基音と倍音の音量関係は、基本の音色や音質に影響します。

シンセサイザーの一般的な波形

ここでは、シンセサイザーの一般的な波形の音質について説明します。

正弦波

クリーンで明瞭なサウンドを特徴とする正弦波には、倍音は含まれず、1 次ハーモニックが含まれます。つまり、これが基音になります。単独の正弦波は、口笛、ガラスのコップの縁を濡れた指でこすったときの音、音叉などの「純粋な」サウンドを作り出す場合に使用できます。

Figure. Short sine signal shown as both a waveform and frequency spectrum.
ノコギリ波

クリアで明るいサウンドを特徴とするノコギリ波には、奇数と偶数の倍音が含まれます。これは、弦楽器、パッド、ベース、および金管楽器のサウンドを作り出す場合に最適です。

Figure. Sawtooth signal shown as both a waveform and frequency spectrum.
矩形波とパルス波

鈍くウッディなサウンドを特徴とする矩形波には、広い範囲の奇数倍音が含まれています。これは、リード楽器、パッド、ベースなどのサウンドを作り出す場合に最適です。また、ノイズなどの別のオシレータ波形と組み合わせて、キックドラム、コンガ、タムタムなどの打楽器をエミュレートすることもよくあります。

Figure. Rectangular signal shown as both a waveform and frequency spectrum.

多くのシンセサイザーでは、波形周期(パルス)をより角ばったものにしたい場合に、パルス幅変調(PWM)コントロールを使って矩形波を再加工します。波形をより角ばったものにすると、鼻にかかった感じの強いサウンドになります。この方法でモジュレーションした矩形波はパルス波と呼ばれ、含まれる倍音が少なくなります。これは、リード、ベース、および金管楽器のサウンドに使用できます。波形を加工するを参照してください。

Figure. Square signal shown as both a waveform and frequency spectrum.
三角波

矩形波と同様に、三角波には奇数倍音のみが含まれます。三角波の高い倍音は、矩形波の高い倍音に比べて減衰速度が大きいため、三角波の方がソフトに聞こえます。これは、フルートのサウンド、パッド、および「オー」という音声などに最適です。

Figure. Triangular signal shown as both a waveform and frequency spectrum.
Noise:ピンク/レッド、ブルー、ホワイト

ノイズは、スネアドラムなどのパーカッションサウンドや、風および波などのサウンドをエミュレートする場合に特に役立ちます。

  • ホワイトノイズ: シンセサイザーで最も一般的なノイズの波形です。ホワイトノイズでは、中心周波数帯付近にあらゆる周波数が最大レベルで含まれます。
    Figure. White noise frequency spectrum.
  • ピンクおよびレッドノイズ: これらのノイズカラーにもすべての周波数が含まれますが、周波数スペクトル全体で最大レベルになってはいません。ピンクノイズは、(高い周波数で)1 オクターブにつき 3 dB だけレベルが低くなります。レッドノイズは、1 オクターブにつき 6 dB だけレベルが低くなります。
    Figure. Pink noise frequency spectrum.
  • ブルーノイズ: ブルーノイズは、ピンクノイズの逆で、高いオクターブの周波数すべてのレベルを 3 dB だけ高くしたものです。
    Figure. Blue noise frequency spectrum.

カラードノイズはほかにもありますが、通常はシンセサイザーでは使用されません。

波形を加工する

基本波形を変形させて、新しい波形を作ることができます。その結果、別の音質や音色が生まれ、作成可能なサウンドの幅が広がります。

波形を加工する方法にはさまざまなものがあります。最も分かりやすい加工方法は、矩形波のパルス幅を変更する方法です。詳細については、シンセサイザーの一般的な波形を参照してください。そのほかの波形変更方法には、位相角度の変更、波形周期の開始位置の移動、マルチオシレータシンセサイザーを使った複数波形の結合などがあります。

これらの方法や、その他の方法で波形を変形する場合、基音とほかの倍音との関係が変化するため、生成される周波数スペクトルや基本サウンドが変化します。

フィルタ

減算方式シンセサイザーのフィルタの目的は、オシレータから送信される信号の一部(周波数スペクトル)を取り除くことです。ノコギリ波の華やかなサウンドにフィルタをかけると、鋭い高音域が削られ、滑らかで温かみのあるサウンドに変化します。

大半の減算方式シンセサイザーのフィルタセクションには、カットオフ周波数(多くの場合カットオフと省略されます)とレゾナンスという 2 つの主要コントロールがあります。そのほかにも、ドライブスロープといったフィルタパラメータがあります。大半のシンセサイザーのフィルタセクションでは、エンベロープ、LFO、キーボード、その他のコントロール(モジュレーションホイールなど)を使ってモジュレーションを実行できます。

フィルタの種類

フィルタにはいくつかの種類があります。各フィルタは、周波数スペクトルのさまざまな部分に固有の効果を及ぼします。

Figure. Frequency spectrum, showing highpass, band reject and lowpass frequency ranges.
  • ローパスフィルタ: 低い周波数はそのまま通し、高い周波数は減衰させます。
  • ハイパスフィルタ: 高い周波数はそのまま通し、低い周波数は減衰させます。
  • バンドパスフィルタ: ある周波数帯域内の周波数だけを通します。
  • バンド遮断フィルタ: ある周波数帯域内の周波数だけを減衰させます。
  • オールパスフィルタ: スペクトル内のすべての周波数を通しますが、出力の位相を変更します。

カットオフ周波数

カットオフ周波数(またはカットオフ)は、その名前が示す通り、信号をカットオフする位置を指定します。単純なシンセサイザーは、ローパスフィルタだけを備えています。このため、20 〜 4000 Hz の範囲の周波数が信号に含まれているときに、カットオフ周波数を 2500 Hz に設定すると、2500 Hz より上の周波数がフィルタされます。ローパスフィルタを使用すると、2500 Hz のカットオフポイントより下の周波数をそのまま通すことができます。

下の図は、ノコギリ波(A = 220 Hz)の概要を示したものです。フィルタは開いた状態、すなわちカットオフを最大値に設定しています。つまり、この波形はフィルタ処理されていますせん。

Figure. An unfiltered sawtooth waveform.

下の図は、フィルタカットオフを約 50% の値に設定したノコギリ波を示したものです。このフィルタ設定により、高い周波数が抑制され、ノコギリ波のとがった部分が丸みを帯びて正弦波に近い波形になります。音響的には、この設定によりサウンドはよりソフトになり、金管楽器らしさが減少します。

Figure. A filtered sawtooth waveform.

この例から分かるように、フィルタを使って周波数スペクトルの一部を取り除くと、波形の形状が変化し、サウンドの音色が変化します。

レゾナンス

レゾナンスは、カットオフ周波数付近の信号を強調したり抑制したりします。下の図は、カットオフ周波数を 660 Hz(約 60%)に設定し、レゾナンスを高く設定した ES1 のノコギリ波の波形です。

Figure. A sawtooth waveform with both resonance and cutoff filtering applied.

このレゾナンスフィルタ設定により、カットオフ周波数付近の信号が非常に明るく荒削りな響きになります。カットオフポイントより下の周波数は影響を受けません。

繰り返しになりますが、全体として、フィルタレゾナンスの使用により基本波形の形状(つまり音色)が変更されます。

フィルタが自己発振を始めるほどフィルタレゾナンスを非常に大きく設定すると、フィルタが正弦波を生成するようになります。

ドライブ

ドライブは、波形をフィルタ処理する際にある量のゲインを波形に追加して(入力ゲイン調整)、フィルタをオーバードライブし、波形に歪みを加えます。この波形の歪みによりサウンドの音色が変化し、ずっと荒削りな音になります。波形の歪みについて詳しくは、波形を加工するを参照してください。

Figure. An unfiltered, overdriven sawtooth waveform.

図は、ドライブを約 80% に設定した、フィルタリングされていないノコギリ波を示したものです。波形の周期が、フィルタのダイナミックレンジの下限と上限に接していることに注目してください。

フィルタのスロープ

すでに説明したように、フィルタは、設定したカットオフ周波数で信号をカットオフします。このカットオフは、突然ではなく一定のスロープで発生します。スロープとは 1 オクターブあたりのゲイン低減のことで、単位はデシベル(dB)です。つまり、比較的急なスロープまたは緩やかなスロープを選択することで、カットオフポイントの「断がい」の傾斜を設定できます。

Figure. Diagram showing the mpact of different filter slopes at 6, 12 and 24 decibels per octave.

アンプセクションのエンベロープ

シンセサイザーのアンプモジュールは、信号の音量(ラウドネス)を経時的に制御します。

これを音楽に当てはめて説明するため、バイオリンのサウンドについて考えてみましょう。弦に弓を当てて滑らかにこするとサウンドはピーク(最大)レベルに向かって緩やかに上昇し、一定期間持続され、弓を弦から放すと突然にカットオフされます。それと比較して、ドラムスティックを使ってスネアドラムを叩くと、サウンドは非常にすばやくピークレベルに達し、サスティン部分なしで、すぐに消滅します(ただし、一定のディケイ(ピークレベルからの減衰に要する時間)は存在します)。このように、これら 2 つのサウンドは経時的な特性が大きく異なります。

シンセサイザーは、サウンドレベルの序盤、中盤、終盤を経時的に制御することにより、これらの音響特性をエミュレートします。この制御は、エンベロープジェネレータと呼ばれるコンポーネントを使って行います。

アタック、ディケイ、サスティン、リリース(ADSR)エンベロープコントロール

下に示す打楽器の音のオシロスコープ波形は、音量が急激に大きくなってレンジの上限に達し、その後減衰します。オシロスコープ波形の上半分を囲むように描いた四角を、サウンドの「エンベロープ」(レベルを時間の関数として表示した図)と見なすことができます。このエンベロープの形を設定するのがエンベロープジェネレータです。

Figure. ADSR (Attack, Decay, Sustain and Release) Envelope parameters.

通常、エンベロープジェネレータには、アタック、ディケイ、サスティン、およびリリースの 4 つのコントロールがあります。これらは、まとめて ADSR と表記されることがよくあります。

  • アタック: 振幅がはじめて 0 から 100%(最大振幅)にスライドするのにかかる時間を制御します。
  • ディケイ: 続いて、振幅が 100% から指定したサスティンレベルに減衰するのにかかる時間を設定します。
  • サスティン: キーを押しているときに生成される一定の振幅レベルを設定します。
  • リリース: キーを放したときに、サウンドがサスティンレベルから振幅 0 まで減衰するのにかかる時間を設定します。

通常は、アタックまたはディケイの段階でキーが放されると、サスティンフェーズはスキップされます。サスティンレベルが 0 の場合、キーを押している間も音量が安定しない、ピアノまたはパーカッションのようなエンベロープが生成されます。

エンベロープを使ってフィルタを制御する

エンベロープジェネレータを使ってできることは、信号の振幅調整だけではありません。フィルタカットオフ周波数の上げ下げを制御したり、その他のパラメータをモジュレートすることもできます。つまり、必要に応じて、エンベロープジェネレータを、特定のパラメータのモジュレーションソース(リモートコントロール)として使用できます。

以降のセクションでは、このようなシンセサイザーの使いかた(モジュレーション)について説明します。

モジュレーション

モジュレーションを使用しない場合、サウンドは聞いていて退屈で疲れるものになる傾向があります。また、ある種の音響モジュレーションが欠落しているために、不自然で人工的な響きにもなります。最も分かりやすいモジュレーションは、オーケストラの弦楽器奏者により使用されるビブラートです。これを使うと、楽器のピッチに音響アニメーションが追加されます。

サウンドをより面白味のあるものにするため、シンセサイザーのさまざまなコントロールを使って基本的なサウンドパラメータをモジュレートできます。

モジュレーションルーティング

ES1、ES2、EXS24 mkII サンプラーなどの、多数のシンセサイザーは、モジュレーションルーターを装備しています。

このルーターを使用すると、必要に応じて、1 つ以上のモジュレーションソースと 1 つ以上のモジュレーションターゲット(デスティネーション)を接続することができます。たとえば、以下を含むモジュレーションソースを使用する場合、オシレータのピッチやフィルタカットオフ周波数などのモジュレーションターゲットを変更できます。

  • ベロシティモジュレーション: キーボード演奏の効果(強弱)。
  • キースケール: キーボード上の演奏位置。
  • コントロールの使用: キーボードに接続されているモジュレーションホイール、リボンコントローラ、ペダルなどが含まれます。
  • 自動モジュレーション: エンベロープジェネレータまたは LFO を使って信号を自動的にモジュレートできます。

ES1 および ES2 のモジュレーション経路

ES1 および ES2 を使用すると、コントロール(モジュレーションソース)からサウンドエンジンの一部(モジュレーションターゲット)へ簡単にルーティングできます。モジュレーション機能およびその他のパラメータの使用方法について詳しくは、ES1およびオシレータのオン/オフボタンを参照してください。

ES1 では、ルーターセクションの左または右の列でモジュレーションターゲットを選択することで、モジュレーション経路を指定できます。キーボードのモジュレーションホイールを使って量を調整可能なモジュレーションターゲットを設定するには、左の列を使用します。右の列で選択するターゲットは、キーボードのベロシティに動的に応答します。このモジュレーションの量(範囲)は、スライダに表示される 2 つの矢印(「Int via Whl」および「Int via Vel」)で調整します。上の矢印ではモジュレーションの最大量を調整し、下の矢印ではモジュレーションの最小量を調整します。

Figure. ES1 Modulation Router.

ES2 では、列に 10 個のモジュレーション経路が表示されます。最初は調整は難しそうに思えるかもしれませんが、各経路の列は ES1 のモジュレーションコントロールとほとんど同じです。下の図の左側に表示された最初の経路に注目してください。

Figure. An ES2 modulation routing.

モジュレーションターゲットは「Pitch123」です。オシレータ 1、2、3 のピッチ(周波数パラメータ)が、(モジュレーションソースの LFO2 の)影響を受けます。

LFO2 がモジュレーションソースです。列の右側にある 2 つの矢印は、モジュレーション量を示します。モジュレーションをより強くするには、上または下の矢印、あるいはその両方を上下にドラッグして、モジュレーションの範囲を拡大します。上の矢印ではモジュレーションの最大量を調整し、下の矢印ではモジュレーションの最小量を調整します。

「via」コントロールは「ModWhl」です。モジュレーションの量(チャンネルの右にあるスライダで設定する範囲)は、キーボードのモジュレーションホイールを使って直接調整できます。モジュレーションホイールが最小値(一番下の位置)に設定されている場合は、オシレータのピッチモジュレーションの量は最小(またはオフ)になります。モジュレーションホイールを上に動かすと、3 つのオシレータすべての周波数は、スライダで設定した範囲内で LFO により直接制御されます。

一般的なモジュレーションソース

このセクションでは、大半のシンセサイザーによく見られるモジュレーションソースについて説明します。

モジュレーションコントローラ

モジュレーションソースは、キーボードでノートを演奏する、モジュレーションホイールを動かすなどの、実行した内容によってトリガできます(たいていは実際にトリガされます)。

このため、モジュレーションホイール、ピッチ・ベンド・リボン、フットペダル、キーボードなどの入力オプションは、モジュレーションコントローラ、または単にコントローラと呼ばれます。

モジュレーションコントローラの最適な使用例は、フィルタエンベロープやレベルエンベロープを調整可能な、ベロシティに対する感度を備えたキーボードの使用でしょう。キーを強く叩くと、サウンドはそれだけ大きく、明るくなります。モジュレーションにエンベロープを使用するを参照してください。

LFO を使ってサウンドをモジュレートする

ほぼすべてのシンセサイザーが備えているモジュレーションソースが、LFO(低周波オシレータ)です。このオシレータは、モジュレーションソースにのみ使用されます。また、その出力する音は低すぎるため、実際のシンセサイザーサウンドを構成する聞き取り可能な信号は生成しません。ただし、これは、ビブラート、フィルタスイープなどを追加することにより、主要な信号に影響を及ぼします。

LFO のコントロール

一般的に、LFO には以下のコントロールがあります:

  • 波形: 波形の種類を選択できます(最もよく見られる波形は三角波と矩形波です)。三角波は、フィルタスイープ(フィルタカットオフ周波数をゆっくりと変更)したり、救急車のサイレンをシミュレート(オシレータ周波数をゆっくりと変更)したりする場合に役立ちます。矩形波の波形は、2 つの異なるピッチをすばやく切り替える場合(ビブラートやオクターブ変更など)に役立ちます。
  • 周波数/レート: LFO の生成する波形周期の速度を設定します。値を低く設定すると非常に遅いランプが生成されるため、海の波打ち音などのサウンドを簡単に作成できます(メインオシレータで波形にホワイトノイズを選択した場合)。
  • 同期モード: 外部テンポソース(ホストアプリケーションなど)と別個に進行するか(ユーザ定義の LFO レート)、同期するかを選択できます。
LFO エンベロープ

一部のシンセサイザーでは、エンベロープジェネレータを使って LFO も制御できます。この手法を使った例として、ストリングセクションのサウンドをサスティンした場合について考えてみましょう。この場合、1 秒程度のビブラートをサウンドのサスティン部分に取り入れるのは効果的です。これを自動的に実行できるなら、両手でキーボードの演奏に専念できます。

一部のシンセサイザーに単純なエンベロープジェネレータが含まれているのは、まさにこのためです。このエンベロープは、たいていはアタックパラメータだけで構成されています。それほど多くはありませんが、ディケイやリリースオプションを含むエンベロープもあります。これらのパラメータの実行方法は、アンプ・エンベロープ・パラメータと同じですが(アンプセクションのエンベロープを参照)、LFO モジュレーションの制御に限定されている点が異なります。

モジュレーションにエンベロープを使用する

シンセサイザーのメイン・エンベロープ・ジェネレータは、経時的な音量制御だけでなく、キーボードのキーを押したり放したりしたときにほかのサウンドパラメータをモジュレートする用途にもよく使用されます。

エンベロープモジュレーションの最も一般的な用途は、キーボードベロシティやキーボードのスケーリング・モジュレーション・ソースを使用した、フィルタカットオフおよびレゾナンスパラメータの調整です(モジュレーションルーティングを参照)。

グローバルコントロール

このセクションでは、シンセサイザーの全体的な出力信号に影響を与えるグローバルコントロールについて説明します。

典型的なグローバルコントロールは、サウンドの全体的な音量を設定するレベルコントロールです。レベルコントロールの詳細については、アンプセクションのエンベロープを参照してください。

そのほかの主要なグローバルコントロールには、以下が含まれます:

  • グライド(ポルタメントと呼ばれることもあります): あるノートピッチが上または下にスライドして別のノートピッチになるまでにかかる時間を設定します。これは、明確に区別できる別のピッチに直接移行するのではなく、ノートからノートにスライドする吹奏楽器をエミュレートする場合に役立ちます。
  • ベンダー/ベンド範囲: このコントロールは通常、キーボードのピッチ・ベンド・ホイールに固定で組み込まれています。その名前が示す通り、ホイールをその中心位置から上または下に動かすことで、ピッチ(オシレータの周波数)が上下にベンドします。通常、ベンダー/ベンド範囲パラメータには 1 オクターブの上限および下限が存在しますが、一般に 3 半音ほど上または下に設定されています。この設定は、トランペットでのノート間の移動や、激しい調子のギターソロでの弦のベンディングなど、一部の楽器で発生する小さな(または極端な)ピッチの揺れをエミュレートするのに最適です。
  • ボイス: シンセサイザーには、同時に生成可能なノート数に制限があります。ノートを同時に生成することは、音源のポリフォニー(文字通りには「多くの声」を意味します)と呼ばれます。ボイスパラメータは、特定の時間に演奏可能なノート数の上限を設定します。
  • ユニゾン: 演奏するノートの周波数の 1 オクターブ上に聞こえるユニゾンボイスを使って、ボイスを「積み重ねる」場合に使用します。ノートの演奏時に 2 つのボイスが使用されるため、ユニゾンにはサウンドを朗々とした豊かなものにする、およびポリフォニーを半減させるという 2 つの効果があります。
  • トリガモード: トリガモードでは、演奏するノート数が使用可能な声部数を超えた場合に、音源のポリフォニーを処理する方法を指定します。トリガモードでは、レガートモードを割り当てることも可能です。基本的に、このコントロールでは演奏技術に対するシンセサイザーの応答方法を変更します。フルート、クラリネット、トランペットなどのモノフォニックな楽器をエミュレートする場合、このコントロールは役に立ちません。トリガ・モード・コントロールを使用する場合、最終ノートを優先させると、演奏中のノートが演奏中の別のノートによりカットオフされます。
    • 最終ノートの優先: すべてのボイスを演奏中に新しいノートがトリガされると、シンセサイザーは、最も早く演奏したノートを終了させてポリフォニー(ボイス)を解放します。これは、Logic Pro シンセサイザーがモノフォニックの場合の、デフォルトのトリガモードです。
    • 先頭ノートの優先: 以前に演奏したノートは停止されません。このモードでは、音源のポリフォニー(ボイス)の上限に達した場合、新しいノートを演奏するために演奏中のノートを停止する必要があります。

メモ: 一部のシンセサイザーでは、モノフォニックな(一度に 1 つのボイスを)演奏中に、トリガ・モード・パラメータを使ってピッチの低い/高いノートの優先度を設定することもできます。

シンセサイザーにはさまざまなモデルがあり、その中にはサウンド全体に影響を及ぼすたくさんのグローバルコントロールが存在します。