EVOC 20 PolySynth には、分析セクションと合成セクションにそれぞれ 1 つずつ、合計で 2 つのフォルマント・フィルタ・バンクがあります。各バンクでは、最大 20 のフィルタを使用できます。実際には、入力信号の全体の周波数スペクトルが分析セクションで分析され、多くの周波数帯域へと均等に分割されます。これらの分析フィルタ帯域は、合成フィルタバンク内で同じ数の周波数帯によってミラーされます。各フィルタバンクは、これらの周波数帯域内のピークレベル、つまりフォルマントを制御します。詳細については、ボコーダーの動作原理およびフォルマントの概要を参照してください。
フォルマント・フィルタ・ディスプレイは上下 2 つに分かれており、上半分が分析セクション、下半分が合成セクションに対応します。パラメータの変更は、フォルマント・フィルタ・ディスプレイにただちに反映されます。これは、2 つのフォルマント・フィルタ・バンクを通過する信号の状態を把握するのに役立ちます。
上部にある横方向の青いバーの長さは分析セクションおよび合成セクションの周波数範囲を示します(後述するように、「Formant Stretch」と「Formant Shift」パラメータのどちらかを使用していない場合)。周波数範囲全体を動かすには青いバーをドラッグします。青いバーの両端にある銀色のハンドルを使用して、低域周波数と高域周波数の値をそれぞれ設定します。
また、数値フィールドで垂直方向にドラッグして、低域周波数と高域周波数の値を調整することもできます。
「Formant Stretch」の値が 0 の場合は、下側の合成フィルタバンク内の帯域の幅と配分は、上側の分析フィルタバンク内の帯域の幅と同じになります。値を低くすると合成フィルタバンク内の各帯域の幅が狭くなり、値を高くすると帯域の幅が広くなります。制御範囲は全帯域幅の比率として表されます。
「Formant Shift」の値が 0 であれば、合成フィルタバンクの帯域の位置は、分析フィルタバンク内の各帯域の位置と同じになります。正の値を指定すれば合成フィルタバンクの中心周波数が高くなり、負の値ならば低くなります。
「Formant Stretch」と「Formant Shift」を組み合わせると、最終的なボコーダー音のフォルマント構成が変わり、面白い音質の変化が得られます。たとえば、話し声の信号に対して「Formant Shift」の値を大きくすると、ミッキーマウスのような声になります。
「Formant Stretch」および「Formant Shift」は、合成信号の周波数スペクトルが分析信号の周波数スペクトルと対応していない場合に特に有用です。たとえば、主として低域の信号を変調する分析信号を使って、高域の合成信号を生成するようなことも可能です。
メモ: 「Formant Stretch」と「Formant Shift」パラメータのどちらか、または両方を使用した場合、「Resonance」設定が高いと、極端にずれたレゾナンス周波数が生じることがあります。