ES2 チュートリアル:サウンドを作成する

このチュートリアルでは、よく使われるサウンドを一から作成する方法を説明します。「テンプレートを使用する」というチュートリアルでは、サウンド作成について説明しますが、その前にテンプレートの解説があります。ES2 チュートリアル:テンプレートを使ってサウンドを作成するを参照してください。

これらのチュートリアルの設定を ES2 のウインドウに表示するには、設定メニューを開いて「Tutorial Settings」を選択します。

一から始める ES2 のサウンド作成、フィルタの設定、デジウェーブ

Analog Saw Init」というチュートリアル設定は、何もないところから新たにサウンドをプログラミングする際の手がかりとなるようにデザインされています。専門の音楽家も、まったく新しいサウンドをプログラミングするときは、このタイプの設定を使うことを好みます。それはつまり、フィルタ処理されていない、エンベロープやモジュレーションなどの仕掛けもまったくない、ノコギリ波のことです。このタイプの設定は、新しいシンセサイザーについて理解を深めるためにも役立ちます。パラメータ値を設定する際も、元の設定値をいちいち確認する必要がありません。

  • まず、減算方式シンセサイザーの心臓部でもある、フィルタから始めましょう。ローパスフィルタには、12 dB、18 dB、24 dB、および「fat」(2 番フィルタのみ)という 4 つのフィルタ・タイプがあります。各タイプについて、「Cut」(カットオフ周波数)と「Res」(レゾナンス)をさまざまな値に設定できます。2 番エンベロープをフィルタエンベロープとして定義します。このモジュレーションの配線は、ルーターでプリセットされています。

  • 「Filter」の「Blend」を左端まで動かし、1 番フィルタが適用された出力だけが聞こえるようにしてください。2 番フィルタを使う方が適している場合も多いのですが、1 番フィルタにもさまざまな長所があります。2 番フィルタは、オクターブあたり 12dB というスロープのローパスフィルタ(「Lo」)に加え、ハイパス、ピーク、バンドパス(BP)、バンド阻止(BR)にも切り替えることができます。1 番フィルタ(ローパス)を通した音は、2 番フィルタに比べて柔らかい響きになります。フィルタの効果をあまり目立たせたくない場合(弦楽器系や FM 音など)に適しています。ディストーション(歪み)をかけた TB-303 風の音も、1 番フィルタを使えば容易に得られます。

  • この設定は、オシレータから出力される波形を直接確認したい場合にも最適です。アナログ波形は、エディタ表示にすると設定できます。デジウェーブを選択したい場合は、「Osc 1 Wave」の設定を「DigiWave」としてください。

オシレータのデチューンとユニゾンモードを使って厚みのある ES2 サウンドを作成する

「厚み」のあるシンセサイザーサウンドはこれまでも人気がありましたが、今後もトランス、テクノ、R & B など分野でこの傾向が続くでしょう。「Analog Saw 3 Osc」は、3 つのオシレータのチューニングを微妙にずらして重ね、厚みを出すというものです。音の厚みを増すために、次の方法を試してみてください。

  • 3 つのオシレータで生成した音に、それぞれ異なる設定のフィルタやエンベロープを適用してみます。

  • コーラスエフェクトを、強さや速度を変えながら試してみます。

  • Unison モードに切り替え、「Analog」を高めに設定します。ポリフォニックになっているので、各ノートが二重に重なります。同時に演奏できるノートの数は、10 から 5 に減ります。これにより、豊かで幅広い響きが得られます。Unison モードで「Analog」を高く設定することによって、ステレオ空間やサラウンド空間全体に音が広がるようになります。

出荷時の設定は、たいていは Unison モードになっています。このモードではプロセッサの負荷が大きくなります。高速な機種を使っているのであれば別ですが、ほかのプラグインも組み合わせて処理する場合は処理が追いつかなくなるおそれがあるので、Unison モードをオフにし、代わりにアンサンブルエフェクトをバスに挿入してみてください。これにより、負荷が軽減されるはずです。いくつかのソフトウェア・インストゥルメント・トラックをフリーズまたはバウンスすることで、CPU のリソースを節約することもできます。

ES2 でチューニングを外したモノフォニックのサウンドおよびエフェクトを作成する

Analog Saw Unison」は、大きくチューニングを外し、フィルタを適用せずオシレータの出力をそのまま重ねているので、非常に厚みのある音になります。3 つともノコギリ波を発振しますが、チューニングはさらに大きく外れています。Unison モードにして「Analog」を大きめに設定する点は重要ですが、今回はモノフォニックモードにして 10 個のボイスを積み重ねます。特にほかのエフェクトをかけなくても、ダンスやトランスなどの音楽に使用されているような厚みのある音になります。フィルタやエンベロープを適切に設定すれば、アルペジオやシーケンスに適した電子サウンドも簡単に作成できます。

  • 2 番フィルタのカットオフ周波数を 0 に設定します。これにより、プリセットされているフィルタエンベロープが適用されます。ほかのエンベロープ設定もいろいろと試してみます。

  • 1 番オシレータの周波数を、1 オクターブまたは 2 オクターブ低くします。

  • 「Drive」や「Distortion」の設定値を大きくします。

  • 2 番エンベロープがベロシティの変化を認識するように設定します。これにより、キーを押す強さに応じてフィルタのモジュレーションの強さを変化させることができます。

  • ES2 の音源チャンネルストリップ(またはバスターゲット)にディレイエフェクトを挿入します。

ES2 で 1 基のみのオシレータを使って純粋な低音を作成する

オシレータを複数使わなくても生成できる音もあります。1 基のオシレータだけでも、純粋で効果的な音作りは可能です。特にベース音にはこれだけで合成できる音が多く、「Analog Bass Clean」設定を使用して、すばやく簡単に合成できます。

材料にするのは、作りたい音より 1 オクターブ下の矩形波です。これに 2 番フィルタを適用します。ここで重要なのは、レガートとグライド(ポルタメント)の設定を組み合わせることです。スタッカートで弾いている場合、ポルタメントはかかりません。レガート奏法にすると、あるノートから次のノートへと滑らかにピッチが変化するようになります。エンベロープが再トリガされるためには、押しているキーを放してから次のキーを押す必要があります。

  • フィルタやエンベロープの設定をいろいろと変えてみます。

  • 矩形波の代わりにノコギリ波を使います。

  • グライドの設定をいろいろと変えます。

低音部を演奏中に編集するのがベストです。ほとんどのノートをスタッカートで、一部をレガートで演奏した、モノフォニックの低音部を作成または演奏してください。グライドを極端に大きな値にすると、面白い効果が得られるでしょう。

ES2 で歪んだアナログ低音を作成する

Analog Bass Distorted」設定で、1 番フィルタの「Drive」および「Distortion」を、大きめに設定して適用します。歪んだアナログ音を生成する場合は、2 番よりも 1 番フィルタの方が適しています。

  • 「Filter」の「Blend」を右端まで移動して、2 番フィルタを無効にしてください。1 番フィルタによるディストーションの効果がはっきりと聞き取れることに注目してください。

  • フィルタモジュレーションを制御するために、ルーターで 1 番モジュレーションチャンネルの緑色のスライダを調整します。これによりモジュレーションの強さが制御できます。

周波数変調の強さと周波数を使って ES2 のサウンドを作成する

FM Start」設定は、線形周波数変調(FM)による音声合成を理解するのに便利です。1 番オシレータで正弦波を生成し、モジュレーションをかけずに聞いてください。次に、2 番オシレータもオンにして正弦波が生成されるように設定します。ただし、出力レベルを 0 にしておきます。三角領域の上端の隅にある小さな四角をドラッグして、設定を変更します。

ES2 では、1 番オシレータが常にモジュレーションターゲット(搬送波)、2 番オシレータがモジュレーションソース(変調波)に割り当てられています。つまり、2 番オシレータが 1 番オシレータをモジュレートするということです。

  • 周波数モジュレーションの強さを調整します。波形セレクタを「Sine」から「FM」までゆっくりと回してください。搬送波と変調波の周波数が同一となる、典型的な FM 音響が聞こえるはずです。

  • 2 番オシレータの変調周波数を調整します。「Fine Tune」を 0 c から 50 c に調整してください。非常にゆっくりと周波数が変動するのが聞こえてきます。LFO(低周波オシレータ)を使った効果に似ていると感じるかもしれません。しかし、ここで使っている変調波は可聴周波数帯域のものです。周波数セレクタで、半音単位で調整できます。2 番オシレータの周波数を、- 36s から+ 36s まで動かしてみてください。幅広い周波数成分が混ざった FM 音が聞こえます。設定によっては、往年の FM シンセサイザーを思い出させるような音にもなります。

  • 2 番オシレータの波形をいろいろと変えてみます。正弦波は古典的な標準 FM 波形ですが、ほかの波形も試してみる価値はあります。特にデジウェーブは面白い効果を生み出してくれます。

  • 搬送波(1 番オシレータ)の周波数を変えてみると、さらに面白い効果が得られます。範囲全体を試してみましょう。ここでは、- 36 s から+ 36 s まで変えてみてください。不協和音程に設定した場合が特に興味深いでしょう。なお、この操作によって基音のピッチも変化しますので注意してください。

エンベロープと FM スケーリングを使って ES2 の周波数変調の強さを制御する

FM Envelope」設定では、2 番エンベロープジェネレータで周波数モジュレーションの強さを制御できます。モジュレーションターゲットはオシレータの波形選択パラメータであり、「Sine」から「FM」の範囲で変化させます。このモジュレーション経路のために、1 番のルーターチャンネルを使います。追加のモジュレーション経路を使って、もっと広い範囲で変化させることも可能です。そのための設定もあらかじめ用意されています。それぞれの値を指定するだけで実行できます。これらのモジュレーションはベロシティには影響されないので、エディタ表示で上下のフェーダーをそれぞれ上端まで動かしてその効果を試してみることができます。

  • 2 番モジュレーションチャンネルのモジュレーションの強さを、1.0 に設定します。それまでよりも幅広く音色が「変化」するようになったのが分かるでしょう。

  • 3 番および 4 番のモジュレーションチャンネルも 1.0 に設定し、音色の変化の幅がさらに広がるのを確認します。

  • モジュレーションの幅をこのように広くしていくと、キーボード上の位置に応じて音質が不均一になります。中低音域ではちょうどよく響いても、高音域になると周波数変調が強すぎると感じられるようになるのです。これを補正するため、5 番および 6 番のモジュレーション経路のキーボード上の位置(kybd)によってモジュレートされるよう 1 番オシレータのターゲットを設定します。これにより、キーボードスケーリングに合わせてモジュレーションの強さが変化するようになります。

  • モジュレーション経路を 4 つ使用して音色を幅広く変化させているため、上記の補正のために 2 つのモジュレーション経路が必要です。下側のスライダは下端まで下げてください。FM サウンドには、優れたキーボードスケーリングが欠かせません。

「FM Drive」および「Filter FM」を使って ES2 サウンドの音色を変更する

FM Drive」設定では、「Drive」および「Filter FM」パラメータを適用すると、FM サウンドの音色を大きく変化させることができます。昔の FM シンセサイザーで、フィードバック回路を使った場合の効果に似ています。

  • 「Drive」やフィルタの「FM」の設定をいろいろと変えてみます。

  • 2 番フィルタのカットオフ周波数を 0 にします。2 番エンベロープジェネレータで、2 番フィルタをモジュレートします。このモジュレーション経路はあらかじめ設定されています。

ES2 でデジウェーブによる FM サウンドを作成する

FM DigiWave」設定では、FM の変調波としてデジウェーブを使用します。このため、2 つのオシレータだけで、ヴィブラフォーンのような音響を作ることができます。従来の FM 合成を用いた場合、通常はこの種類の音色は正弦波オシレータを多数用意しなければ生成できませんでした。

重厚でうねり感があり、ある種の情緒感を帯びた音響を得るため、ポリフォニックの Unison モードが選択されています。フィルタや振幅エンベロープは、目的のサウンドを形成するようにプリセットされています。

  • FM モジュレーションソースとして使うデジウェーブを、いろいろと変えて試してみます。

  • 「Analog」パラメータ値もいろいろと変えてみます。

ES2 で波形テーブルによる FM サウンドを作成する

変調波をデジウェーブとし、時間の経過に伴って徐々にそのデジウェーブが変わっていくようにすることで、非常に強烈な印象を与える FM サウンドを作成できます。FM デジウェーブを徐々に変えていくために、ここでは LFO2 を使用します。そのテンポ、つまりデジウェーブが切り替わっていく速度は、ホストアプリケーションのテンポによって決まります(この場合は 2 小節分で 1 周期)。

  • LFO2 の波形をいろいろと変えてみます。特に、「Lag S/H」(smooth random)という設定にすると面白い効果が得られます。

  • FM モジュレーションの強さや発振周波数もいろいろと変えてみます。

  • 1 番モジュレーションチャンネル、すなわち、LFO2 で 2 番オシレータの波形をモジュレートするために使っているチャンネルのモジュレーションの強さや、LFO2 の「Rate」も変えてみます。

モノフォニックの Unison モードを使って歪ませた ES2 FM サウンドを作成する

FM Megafat」設定は、歪みを加えたベースやギター風の音に最適です。高音域ではむしろ「粗野な」音に聞こえます。音域に合わせて補正することはできませんが、どの音域でも「きれいに」響かせる必要はありません。

  • 「Analog」パラメータを調整して、チューニングを大きくずらしてみてください。

  • このサウンドにフランジャーを効かせてみます。

  • 2 番フィルタのカットオフ周波数を 0 に下げて、フィルタエンベロープを適用します。

  • 「Glide」を調整して、リードサウンドにポルタメントをかけます。

  • FM 音の場合は、オシレータの周波数を変えると、必ずサウンドが大きく変化します。不協和音程も設定して試してみてください。

ES2 で変わったスペクトルの FM サウンドを作成する

ピッチがはっきりした音ではなくても構わなければ、オシレータ間の周波数比を変わった値に設定にして、不気味な音を作ることができます。

FM Out of Tune」設定では、リングモジュレーションを使ったシンセサイザーを連想させる、ヴィブラフォーンのような音が得られます。被変調波は 30 s 0 c、変調波は 0 s 0 c と設定されています。1980 年代に電子音楽で多用されましたが、最近になって再び、環境音楽やトランス音楽に使われるようになりました。

フィルタ、エンベロープによるモジュレーション、エフェクトなどを適用することにより、さらに音色に変化を与えることができます。ただし、調子の外れた音になることには注意してください。

  • FM 音のチューニングの基準として 3 番オシレータを使います。三角領域の四角いアイコンをドラッグしてちょうど良い比率に合わせてください。

  • 実際に聞こえる音は、本来より 5 半音分高い(あるいは 7 半音分低い)ことに気が付くでしょう。

  • 1 番および 2 番オシレータの周波数を 5 半音(500 セント)低くします。逆に高い値にしようとすると、1 番オシレータを 37 s 0 c にしなければならなくなり、指定範囲の上限である 36 s 0 c を超えてしまいます。

  • 1 番および 2 番オシレータの周波数比は一定に保つ必要があります。5 半音低くした結果、1 番オシレータは 25 s O c、2 番オシレータは 5 s 0 c になります。

ES2 の 2 番オシレータでパルス幅変調を設定する

パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)は、アナログシンセサイザーには欠かせないものです。

  • PWM Start」の設定を選び、波形コントロールを、矩形波とパルス波の間でゆっくり前後に動かしてみてください。どちらも目盛についているマークは緑色です。これが手動でパルス幅変調した音です。

  • PWM Slow」の設定を選びます。手動でモジュレートする代わりに、LFO1 を変調波としてパルス幅変調します。聞こえる音は手動の場合と同様です。

  • LFO1 のレートを、あらかじめ設定されている 0.230 から 4.400 に上げます。古典的な、速い PWM になります。

  • この設定および次の設定では、低音になるほど PWM が遅く、高音になるほど速く響くようになっています。シンセサイザーで合成した弦楽器系の音などでは、この特徴が顕著に現れます。まず、LFO1 の「Rate」を 3,800 に減らしてください。

  • ルーターの 2 番モジュレーションチャンネル(モジュレーションターゲットは LFO1 の「Rate」、モジュレーションソースは「Kybd」)のモジュレーションの強さを 0.46 に変更します。PWM の強さが音域によって変わり、高音域で速く響くようになります。「PWM Scaled」の設定でも同じような音が聞こえます。

    ヒント: PWM 音にはオーバードライブや歪みを加えないようにしてください。

ES2 でパルス幅変調による弦楽器音を作成する

音の厚みを増すために 3 番オシレータを追加し、これもパルス幅変調します。実際には、1 番オシレータでもパルス幅変調をかけることは可能です。「PWM 2 Osc」の設定では、2 つのオシレータのチューニングはかなり外れています。これを出発点として、PWM による独自の弦楽器音を作り出してください。

  • コーラスの強さを調整します。音の広がりが増すよう、大きめの値にします。

  • 3 番エンベロープは好みに応じて設定してください。少なくとも、アタック時間とリリース時間は長めに設定する必要があります。必要に応じ、ベロシティに反応するようにしてください。単なるパッドサウンドとして使用するのでなければ、ディケイ時間は短めに、サスティンレベルは低め(約 80 〜 90%)にするとよいでしょう。

  • 1 番フィルタのカットオフ周波数とレゾナンスを低めにして、音を柔らかくします。

  • できあがった設定を保存しておいてください。

  • この結果を元の「PWM 2 Osc」の設定と聞き比べてみてください。音が大きく変わっているのが分かるはずです。

  • 先の手順で作った「PWM Soft Strings」の設定とも比べてみてください。若干似た点があることに気付くでしょう。

ES2 でリングモジュレーションによるサウンドを作成する

リングモジュレーションは、2 つの入力信号から、その周波数の和および差に相当する信号を出力します。

ES2 の場合、2 番オシレータの波形として「Ring」を選択すると、2 番オシレータの矩形波と 1 番オシレータの出力信号をリングモジュレーションした結果が出力されます。

2 つの発振周波数(周波数比)が不協和音程の関係であれば、ベルのような響きが得られます。「Ringmod Start」の設定もこのようになっています。

3 番オシレータをチューニングの基準として使用できます。ただし場合によっては、チューニングについては無視し、別の基本波の倍音成分を生成するために 3 番オシレータを使う方がよいかもしれません。

広がりのあるベルのようなサウンドをプログラムしてみてください。想像力を働かせることは大事ですが、いくつかヒントを挙げてみます:

  • 1 番オシレータと 2 番オシレータの周波数比をいろいろ変えてみてください。たとえば 29 s 0 c/21 s 0 c という比では、調子の外れた音にはなりません。リングモジュレーションは、ベルのような音を作る場合に限らず、さまざまな倍音構成を作り出すのに役立ちます。低音域の周波数設定で不気味な響きにすることもできます。各オシレータを微調整して、別の設定も試してみてください。

  • 「Intensity」を 50%、「Rate」を最大値の 2/3 程度にして、コーラスエフェクトを加えてみます。

  • 3 番エンベロープのアタック時間とリリース時間を、好みに応じて設定します。

  • 多少「調子外れ」の音が好みの場合は、「Drive」やフィルタの「FM」を適用してみます。

  • その他のパラメータは自由な発想で設定してください。

ES2 でオシレータの同期によるサウンドを作成する

2 番および 3 番オシレータの波形として、「同期」矩形波や「同期」ノコギリ波を選択した場合、同期の基準となるのは 1 番オシレータの出力信号です。「Sync Start」の設定では、聞こえるのは 2 番オシレータだけで、3 番オシレータはオフになっています。

典型的な同期音は、周波数が幅広い周波数範囲で大きく変化するのが特徴です。この周波数変調(スイープ)効果を与える方法はさまざまです。

  • あらかじめ、モジュレーションホイールでピッチをモジュレートするようになっているので、まずこれを試します。

  • あらかじめ、ルーターの 2 番モジュレーションチャンネルで、エンベロープによるピッチモジュレーションを行うよう設定されています(モジュレーションターゲットは Pitch 2、モジュレーションソースは Env 1)。モジュレーションの強さの最小値を 1.0 にすると、典型的な同期エンベロープになります。1 番エンベロープのディケイ時間を短めにしたときの効果も試してみてください。

  • (エンベロープ上のディケイフェーズ以降の部分で)貧弱で生気のない音になるのを避けるには、発振周波数を LFO でも周波数変調するとよいでしょう。ルーターの 3 番モジュレーションチャンネルを使います。LFO 1 によるモジュレーションの強さの最小値を 0.50 程度にしてみてください。

  • 同期矩形波を同期ノコギリ波に置き換え、満足できる音が得られるか試してみてください。

メモ: パルス幅変調の変調波として、2 番および 3 番オシレータで生成した同期矩形波を使うことも可能です。同期矩形波を選択した場合、この 2 つのオシレータの波形のパラメータをモジュレートすれば、パルス幅変調をかけたことになります。

ES2 でのベクトル合成の初歩

このチュートリアルでは、ベクトルエンベロープのプログラミングに関するヒントを紹介します。「Vector Start」の設定では、各オシレータの出力をミックスする比率の調整に、ベクトルエンベロープを使用します。発振波形はオシレータごとに異なります。

  • ルーター表示からベクトル表示に切り替えます。

  • 基本(デフォルト)設定では、ベクトルエンベロープにポイントが 3 つあります。1 番は開始位置、2 番はサスティンポイント、3 番はリリースフェーズに入るきっかけの点です。各点をクリックすると、三角領域上のカーソルが、1 番オシレータの比率が 100%になる位置になります。

  • 2 番ポイントをクリックし、三角領域上の四角いアイコンを 2 番オシレータのほうにドラッグしてみます。1 番オシレータのノコギリ波が消え、代わりに矩形波が聞こえてきます。

  • 「Solo Point」パラメータをオフにしてベクトルエンベロープを有効にしてください。これがオンになっていれば、各ポイントをクリックしたときに設定が変わるだけで、動的な制御はできません。「Solo Point」をオフにすると、ノートがトリガされるたびにサウンドがノコギリ波から矩形波へと変化していく様子が分かります。

  • 1 番ポイントと 2 番ポイントの間のプリセット値(498 ミリ秒)を変更します。

  • Shift キーを押しながら、1 番ポイントと 2 番ポイントの間をクリックしてください。新しいポイントができてこれが 2 番になり、それまで 2 番だった点は 3 番になります。1 番から 3 番の間の時間が分割され、1 番から 2 番までの時間、2 番から 3 番までの時間になります。分割の比率は、クリックした位置に応じて決まります。ちょうど中間の位置をクリックした場合は、2 等分されることになります。

  • 新しくできた 2 番ポイントをクリックし、三角領域上の対応する四角いアイコンを 2 番オシレータのほうにドラッグします。

  • 3 番ポイントをクリックし、三角領域上の対応する四角いアイコンを 3 番オシレータのほうにドラッグしてみます。3 つのオシレータの波形がノコギリ波から矩形波、そしてサスティンポイントに到達すると三角波へと変化します。

  • 4 番ポイント(終了位置)をクリックし、もしそうなっていなければ三角領域上の対応する四角いアイコンを 1 番オシレータのほうへドラッグしてください。この状態で演奏すると、キーを放したときに三角波から 1 番オシレータのノコギリ波に戻っていくのが分かります。

ES2 でプレーナーパッドを使ってベクトル合成を行う

Vector Envelope」の設定は、「Vector Start」の設定をオフにした状態で始めます。先の例では、ポイントが 4 つある簡単なベクトルエンベロープを使って、各オシレータの信号をミックスする比率(三角領域上のカーソル位置)が変化するようにしました。

今度は、ベクトルエンベロープを使って、さらに 2 つのパラメータを制御します。それは、2 番フィルタのカットオフ周波数とパンです。これらのパラメータは、プレーナーパッドの X 軸および Y 軸に対してプリセットされています。値はどちらも 0.50 です。

  • 各ポイントの設定を聞いて確認しやすいように、「Solo Point」をオンにします。

  • 1 番ポイントをクリックします。1 番オシレータのノコギリ波が聞こえます。

  • プレーナーパッドの四角いアイコンを左端にドラッグすると、2 番オシレータのカットオフ周波数が低くなります。

  • 2 番ポイントをクリックします。2 番オシレータの矩形波が聞こえます。

  • プレーナーパッドの四角いアイコンを下端までドラッグしてください。音のパン位置が最も右側へと移動します。

  • 3 番ポイントをクリックします。3 番オシレータの三角波が聞こえます。

  • プレーナーパッドの四角いアイコンを上端までドラッグしてください。音のパン位置が最も左側へと移動します。

  • 「Solo Point」をオンにします。キーを押すと、始めはフィルタのかかったノコギリ波の音が出ますが、しだいにフィルタのかかっていない矩形波へと変化します。次いで、右側から聞こえていた音が左側に移動し、それにつれて三角波に変わっていきます。キーを放すとノコギリ波に戻ります。

ES2 でベクトル合成ループを使用する

Vector Loop」設定の基本サウンドは、ベクトルエンベロープを使わずに 3 つの信号をミックスしたものです:

  • 1 番オシレータは金属的な FM 音で、これは 2 番オシレータの波形テーブルでモジュレートされたものです。

  • 2 番オシレータの出力はクロスフェードのかかったデジウェーブ(波形テーブル)で、これは LFO2 でモジュレートされたものです。

  • 3 番オシレータは、バランスの取れた、キーボードでスケーリングされた LFO の速度で PWM 音を発生ます。

「Unison」および「Analog」の設定により、音に厚みや広がりが加わります。

このまったく異なる音色の材料を使って、ベクトルループの使いかたを試してみましょう。

デフォルト状態では、ゆっくりとした前向きのループが設定されています。3 番オシレータ(PWM 音、1 番ポイント)から 1 番オシレータ(FM 音、2 番ポイント)、次いで 3 番オシレータ(PWM 音、3 番ポイント)へと戻り、その後 2 番オシレータ(波形テーブル、4 番ポイント)に変わり、最後にまた 3 番オシレータ(PWM 音、5 番ポイント)に戻ります。ループで 5 番ポイントから 1 番ポイントに戻るときに状態が変わるのを避けるために、この 2 つのポイントの設定は同一になっています。設定をそろえる代わりに、滑らかに「遷移」するよう「Loop Smooth」で調整しても構いませんが、リズムを合わせにくくなるのが難点です。

ベクトルエンベロープの各ポイント間の距離は、正確にリズムに同期するように設定されています。「Loop Rate」が「as set」以外になっているため、ミリ秒単位ではなく、ループ全体の長さに占める比率で表示されているのです。ポイント間の 4 つの時間間隔は、いずれも 25%になっているので、音符に換算するのは簡単です。

  • 「Solo Point」をオンにして、ベクトルエンベロープを無効にします。各ポイントを個別に設定できるようになります。

  • プレーナーパッド上の四角いアイコンの位置を、好みに応じて変えてください。プレーナーパッドの X 軸、Y 軸は、それぞれ 2 番フィルタのカットオフ周波数とパン位置を制御するようになっています。調整しだいで、音がより生き生きとした響きになります。

  • 「Solo Point」をオフにして、ベクトルエンベロープを有効にします。できあがった音を聞きながら、プレーナーパッド上の四角いアイコンの位置を微調整します。

  • 「Loop Rate」をプリセット値である 0.09 から 2.00 に変更します。LFO のような周期的なモジュレーションが確認できます。この段階では、モジュレーションはプロジェクトテンポに同期していません。ループの速度をプロジェクトテンポに同期させるために、「Loop Rate」を左端まで動かし、拍単位または小節単位で設定してください。

  • ポイントを増やせば、さらに細かい制御が可能になります。隣り合う 2 つのポイントの間をクリックしてポイントを追加し、分割されたそれぞれの時間パラメータを指定します(例:12.5%)。

自励発振フィルタとベクトルエンベロープを使用して ES2 のバス・ドラム・サウンドを作成する

電子ドラムのキックサウンドは、自励発振しているフィルタをモジュレートして生成することがよくあります。ES2 も同じ手法であり、モジュレーションにはベクトルエンベロープを使用します。一般的な ADSR エンベロープの代わりにベクトルエンベロープを使う利点は、ディケイフェーズを 2 つに分け、それぞれ別に設定できるということです。自励発振信号全体にディストーションエフェクトを適用しても、ドラムサウンドの本来の特徴が損なわれることはありません。

メモ: Vector Kick」の設定をさらに迫力あるものにするため、「Flt Reset」を有効にします。これは、オシレータがすべてオフになっているのでフィルタが発振を始めるまでに多少の時間がかかるという理由から必要になります。「Flt Reset」が有効であれば、各ノートの開始時に非常に短いインパルスがフィルタに送信され、これがトリガとなってフィルタがただちに発振を始めます。

Vector Kick」の設定を調整することにより、ダンスフロアのキックドラムの音を自在に作成できます。より効果的で魅力ある音にするため、次のパラメータを調整してみてください:

  • 2 番フィルタのスロープ:12 dB、18 dB、24 dB

  • ディストーションの強さ:Soft、Hard

  • 3 番エンベロープのディケイ時間:(D)

  • ベクトルエンベロープの 1 番ポイントから 2 番ポイントまでの時間:プリセットは 9.0 ミリ秒

  • ベクトルエンベロープの 2 番ポイントから 3 番ポイントまでの時間:プリセットは 303 ミリ秒

  • ベクトルエンベロープの「Time Scaling」

ES2 で 2 分割したフィルタのディケイフェーズを使って打楽器音およびベース音を作成する

「Vector Kick」設定と同様に、「Vector Perc Synth」設定でもベクトルエンベロープを使ってフィルタのカットオフ周波数を制御します。ディケイフェーズを 2 分割する点も同様です。これは一般的な ADSR エンベロープジェネレータでは不可能です。次のようなパラメータを調整して、いろいろな打楽器音やベース音を作ってみてください:

  • ベクトルエンベロープの 1 番ポイントから 2 番ポイントまでの時間(=1 番ディケイ)

  • ベクトルエンベロープの 2 番ポイントから 3 番ポイントまでの時間(=2 番ディケイ)

  • ベクトルエンベロープの「Time Scaling」

  • 1、2、3 番ポイントに対応する、プレーナーパッド上の四角いアイコン(=カットオフ周波数)

  • 波形(ほかの波形を選択する)