Vocal Transformer

Vocal Transformer を使えば、ボーカルラインのピッチを変更することから、旋律の範囲を広げたり狭めたりすることはもちろん、音高を 1 つだけにすることや、旋律のピッチを逆にすることさえ可能です。メロディーのピッチをどのように変えても、信号の構成要素(フォルマント)は変わりません。

フォルマントだけをシフトすることができるので、ピッチは変えずにボーカルトラックをミッキーマウスのような声に変えたりすることができます。フォルマントとは、所定の周波数範囲だけ音量が特性的に強調されている部分のことです。これは固定的なもので、ピッチと共に変化することはありません。フォルマントは、その人固有の声質を決める音響要素です。

Vocal Transformer は、強烈な音声変調効果を生み出すのに最適です。モノフォニック信号(モノフォニック音源トラックを含む)について使用すると最高の結果が得られます。ポリフォニックなボイス(合唱を 1 トラックに収めた場合など)など、コードを伴うトラックには使用できません。

Vocal Transformer のパラメータ

Vocal Transformer には以下のパラメータがあります。

Figure. Vocal Transformer window.
  • 「Pitch」ノブ/フィールド: 入力信号に適用するトランスポーズの度合いを定義します。Vocal Transformer の「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定するを参照してください。
  • 「Robotize」ボタン: 「Robotize」モードを有効にします。「Robotize」モードは旋律を広げたり、狭めたり、逆にしたりするために使用されます。Vocal Transformer の「Robotize」モードを使うを参照してください。
  • 「Pitch Base」スライダ/フィールド(「Robotize」モード時のみ有効): 「Tracking」パラメータ(下記を参照)が基準とするノートのトランスポーズに使用します。Vocal Transformer の「Robotize」モードを使うを参照してください。
  • 「Tracking」スライダ/フィールド/ボタン(「Robotize」モード時のみ有効): 「Robotize」モードにおける旋律の変化を制御します。Vocal Transformer の「Robotize」モードを使うを参照してください。
  • 「Mix」スライダ/フィールド: 元の信号(ドライ信号)とエフェクト信号のレベル比を定義します。
  • 「Formant」ノブ/フィールド: 入力信号のフォルマントをシフトします。Vocal Transformer の「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定するを参照してください。
  • 「Glide」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): ボーカルトランスフォーメーションに要する時間を定義し、ピッチ値の設定に応じて徐々に変化するようにします。
  • 「Grain Size」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): Vocal Transformer エフェクトのアルゴリズムはグラニュラ合成に基づいています。「Grain Size」パラメータでは、グレインのサイズをきめ細かく設定できるため、処理プロセスを精密に行うことができます。いろいろ試して、最適な設定を探してください。まず、「Auto」を試してみるとよいでしょう。
  • 「Detune」スライダ/フィールド(拡張パラメータ領域): 設定した値で入力信号をデチューンします。このパラメータは、自動化すると特に便利です。

Vocal Transformer の「Pitch」と「Formant」のパラメータを設定する

Vocal Transformer の「Pitch」パラメータを使うと、信号のピッチを上下にトランスポーズできます。調整は半音刻みで行われます。入力ピッチは「Pitch Base」フィールド下の縦線で示されます。5 度上(Pitch =+ 7)、4 度下(Pitch =- 5)、または 1 オクターブ上下(Pitch =±12)のトランスポーズが、和声的には最も有用です。

Figure. Pitch and Formant parameters

「Pitch」パラメータを変更しても、フォルマントは変わりません。フォルマントとは、所定の周波数範囲だけ音量が特性的に強調されている部分のことです。これは固定的なもので、ピッチと共に変化することはありません。フォルマントは、その人固有の声質を決める音響要素です。

「Pitch」パラメータは音声の特性ではなくピッチを変更するために使用されます。女声のソプラノについて負のピッチ値を設定すれば、そのシンガーの声の特性を変えずにアルトにすることができます。

「Formant」パラメータは、ピッチをまったく変えないか、個別に変更しながらフォルマントをシフトします。このパラメータに正の値を設定すると、ミッキーマウスのような歌声になります。このパラメータの値を小さくすると、「スター・ウォーズ」のダースベイダーを思わせるサウンドエフェクトを実現できます。

ヒント: 「Pitch」を 0、「Mix」を 50 %、「Formant」を+ 1(「Robotize」はオフ)にすると、元の歌い手の横に少し小さな歌い手が並んでいる状態を作り出すことができます。2 人の歌い手はほぼ同じ声で合唱します。声のダブリングは非常に効果的で、「Mix」パラメータで簡単にレベルを調整することができます。

Vocal Transformer の「Robotize」モードを使う

「Robotize」を有効にすると、旋律を広げたり狭めたりすることができます。「Tracking」パラメータを使うと、元の音からの離れ具合を調整できます。

Figure. Robotize parameters

「Tracking」スライダおよびフィールドには 4 つのボタンがあり、以下の最も便利な値に即座にスライダを設定できます:

  • -1(スライダを- 100 %に設定): すべての音程が逆になります。
  • 0(スライダを 0 %に設定): ボーカルトラックのすべての音が同じピッチで歌われるという面白い結果が得られます。この値を小さくすると、歌われている旋律が話し声のようになります。
  • 1(スライダを 100 %に設定): 旋律の範囲が維持されます。値が大きくなると旋律が広がり、値が小さくなると旋律が狭まります。
  • 2(スライダを 200 %に設定): 音程が倍になります。

「Pitch Base」パラメータは、「Tracking」パラメータが基準とするノートのトランスポーズに使います。たとえば「Tracking」を 0 %にすると、選択した基準ピッチの値にノート(話し声)のピッチがトランスポーズされます。