シンセサイザーとは

サウンド合成は、サウンドをその基本プロパティ(正弦波などの単純な音波)から電気的に生成することです。

シンセサイザーは、さまざまなサウンド(別の楽器、人の声、ヘリコプターや自動車の音、犬の鳴き声など)をエミュレートまたは合成(シンセサイズ)できることから名付けられました。シンセサイザーは自然界に存在しない音も作り出すことができます。ほかの方法では作りようのない音を生み出すことができるという点で、シンセサイザーはまさに唯一無二の楽器と言えます。

最も単純なシンセサイザーは、ピッチ制御機能がほとんど、あるいはまったくない基本正弦波ジェネレータでしょう。残念ですが、この種の単純なシンセサイザーでは正弦波以外の音を合成することはできません。

ただし、ピッチ制御機能を持つ複数のサインジェネレータを組み合わせれば、興味深く有用な音をいろいろと作り出すことができます。

シンセサイザーでは、トーン生成タスクはオシレータと呼ばれるコンポーネントにより行われます。大半のシンセサイザーオシレータは、ノコギリ波、三角波、矩形波、およびパルス波などの倍音成分の多い波形を生成します。これらの波形の名前は、その形状がノコギリの歯、三角形、四角形などに似ていることから付けられています。シンセサイザーの一般的な波形については、オシレータを参照してください。

基音および関連する倍音を整形して別のサウンドにするには、シンセサイザーのあるコンポーネント(モジュールとも呼ばれます)から出力された信号を別のコンポーネントに通します。モジュールごとに異なるジョブを実行して、ソース信号を加工します。

モジュール型のシンセサイザーでは、各モジュールをケーブルで接続して信号の経路を作成します。ただし、最新式のシンセサイザーでは、モジュール間の信号経路は内部的に配線されていて、通常はスイッチやノブなどのコントロールを使って変更します。

さまざまなシンセサイザーコンポーネントについて、およびそれぞれが相互に連係してサウンドを作り出す方法については、減算合成の仕組みを参照してください。

シンセサイザーは、通常考えられているよりも長い歴史があります。デジタル技術が利用されるようになるまで、電子シンセサイザーはすべてアナログでした。また、電子式のシンセサイザーが登場する前のシンセサイザーは機械式でした。詳しくは、シンセサイザーの小史を参照してください。

アナログ

アナログシンセサイザーは、電圧制御式の回路(オシレータ、フィルタ、アンプなど)を組み合わせてサウンドを生成および整形していました。通常、電圧の高さは波形のピッチと直接関連があります。つまり、電圧が高いほどピッチが高くなります。

デジタル

デジタルシンセサイザーでは、信号経路がデジタル化されています。つまり、0 と 1 の 2 進数で表された記述が、あるアルゴリズムから別のアルゴリズムへと流れていきます。

アナログとデジタルのハイブリッドシンセサイザー

一部のシンセサイザーには、デジタルオシレータとアンプが装備されています。デジタルオシレータで生成された信号は、アナログフィルタに送信されます。この方法の主な利点は、デジタルオシレータでは、アナログオシレータにしばしば発生し、不評であったピッチのずれが発生しないことです。

バーチャルアナログ

バーチャル・アナログ・シンセサイザーとは、アナログシンセサイザーのアーキテクチャ、機能、特性を模したデジタルシンセサイザーのことです。オシレータ、フィルタなどの、アナログシンセサイザーに存在するモジュールの動作および機能は、コンピュータのアルゴリズムを使ってエミュレートされます。

ES1 は、バーチャル・アナログ・シンセサイザーの優れた例です。仮想信号のフローは、通常のアナログシンセサイザーの場合と同じです。ただし、(仮想オシレータなどで実行される)信号処理はすべて、コンピュータの CPU(中央処理装置)で行われます。

ES1 は、特定のアナログ回路が持つ望ましい特性(オシレータレベルを高くするとフィルタにオーバードライブがかかるなど)も再現します。ただし、アナログシンセサイザーはチューニングが完全にずれてしまう傾向がありますが、こうした欠点は再現されません。

バーチャル・アナログ・シンセサイザーのアナログシンセサイザーに対する利点がはほかにもあります。完全にプログラマブルである(サウンド設定を保存できる)、完全に自動化できる(フェーダーやノブの動きを記録、再生できる)、マルチティンバー型である(複数の音色を別々の音源チャンネルで再生できる)などです。ポリフォニックである(複数音を同時に演奏できる)、ベロシティを感知できるなどの特徴は、大半のバーチャル・アナログ・シンセサイザーに見られますが、アナログ音源にはほとんどありません。