このセクションでは、Dolby Digital Professional プログラムでチャンネルを扱う方法について、さらに詳細な説明および提案を行います。
マルチチャンネルシステムでは、センターに配置されたサウンドイメージを実現する方法が 3 通りあります。
サラウンドエフェクトを巧みに使うことで、従来のステレオにはない音の奥行き感を手に入れることができます。ポピュラー音楽の多くは、独創的な方法でサラウンドを活用することで大きな効果を上げています。ただし、使いすぎると逆効果になります。映画業界は、聴き手の気持ちをストーリーから引き離さすようなサラウンドエフェクトを戒めていますが、これは音楽にも当てはまることです。
重低音エフェクト(LFE)チャンネルは、限られた周波数帯域を持つ、独立した信号で、ミキシングエンジニアによって作成され、ミックスのメインチャンネルと一緒に配信されます。Dolby Digital Professional エンコーダで 120 Hz の「ブリックウォール」フィルタを使用すると、LFE チャンネルの使用が下位の可聴 2 オクターブに制限されます。Dolby では、サウンドをミックスするときには信号を 80 Hz に制限するよう推奨しています。
ほとんどの音楽制作では(チャイコフスキーの「序曲 1812 年」の有名なキャノン砲は例外として)、LFE チャンネルは必要ありません。LFE 信号は、Dolby Digital Professional ダウンミックス処理でも切り捨てられるため、強烈なベース信号が小さなステレオシステムを圧迫することはありません。モノラル、ステレオ、または Pro Logic 再生で失われる重要な情報を LFE チャンネルに含めないでください。
LFE はほかのチャンネルとは独立しているため、LFE 信号の生成に使用されるフィルタによって、高い周波数とブレンドする機能が影響を受ける可能性があります。結合力のあるオーディオ信号を確保するには、1 つまたは複数のメインチャンネルに信号全体をまとめます。
元来 LFE チャンネルを使わずに作成された素材のために LFE チャンネルを作成しないでください。Dolby Digital Professional の 5 つのメインチャンネルはすべてフルレンジであり、LFE チャンネルにより周波数応答が増大することはありません。Dolby Digital Professional デコーダでは、低周波数をサブウーファーまたはほかの適当なスピーカーに送信するベース管理が可能です。LFE トラックがベース管理を妨害することがあります。
5.1 システムは普及していますが、必ずステレオリプロダクションを処理する必要があります。これを行うための基本的な方法が、以下のように 3 通りあります:
オリジナルのマルチトラック要素から新しいステレオミックスを準備する方法(従来のステレオミキシングセッションを使用)。
マルチチャンネルミックスからスタジオ調整ダウンミックスを準備する方法。この方法では、5.1 バージョンのミックスを完了した作業が利用されます。完成したステレオミックスに示される各チャンネルの割合が正確に保持されるという柔軟性があります。
デコーダであらかじめ設定されている方法に基づいて、ステレオダウンミックスを生成する方法。ダウンミックスのオプションおよびダイナミックレンジ・コントロールエフェクトは、制作スタジオでプレビューし、一定の範囲内で調整することができます。
高価ではないサラウンドシステムでミックスを確認し、一般的な再生システムで鳴らされる音を基に評価してください。
メモ: Dolby Digital Professional の詳細については、Dolby Laboratories Inc. の Web サイト(http://www.dolby.com)にある「Dolby Digital Professional に関する FAQ」を参照してください。