「同期」プロジェクト設定

「同期」プロジェクト設定は、「一般」、「オーディオ」、「MIDI」、および「Unitor」という 4 つのタブで構成されます。

Figure. Synchronization project settings.
「同期」プロジェクト設定を開くには
以下のいずれかの操作を行います:
  • 「ファイル」>「プロジェクト設定」>「同期」と選択します(または「同期のプロジェクト設定を開く」キーコマンドを使います。デフォルトは Option + Y キーです)。

  • 「アレンジ」ウインドウのツールバーの「設定」ボタンをクリックし、ポップアップメニューから「同期」を選択します。

  • Control キーを押しながらトランスポートバーの「同期」ボタンをクリックし、ショートカットメニューから「同期設定」を選択します。

「同期」設定の「一般」パネル

「同期」プロジェクト設定の「一般」パネルには、次の同期関連パラメータが含まれています(「Logic Pro」をスレーブにしている場合に使用)。

Figure. General pane of the Synchronization project settings.
  • 「外部同期信号を自動認識」チェックボックス: このオプションを選択した場合、「Logic Pro」は、同期信号を MTC 形式で受信するかテンポインタプリタから受信するまでマスターとして動作します(内部同期モード)。

    最初の同期信号を受信すると、その信号を基準にするように自動的に切り替わります。

    重要: 同時に複数の同期信号が届かないようにしてください。タイムコードのマスターは 1 つしか存在できないので注意してください。

  • 「MTC フォーマットを自動認識」チェックボックス: このチェックボックスを選択した場合、受信したタイムコードが分析され、自動的に適正なフレームレートに設定されます。通常、このオプションは選択状態にしておく必要があります。

    MTC フレームレートの 29.97 fps と 30 fps は、次の理由から自動的には区別されません:

    • MTC規格では、この2つの区別が認められていません。

    • 30 fps または 29.97 fps が検出されても、元のタイムコードが速く、または遅くなったと解釈することもできます。

    フレームレートがおよそ 30 fps の場合、「Logic Pro」では、ドロップフレーム形式が使用されているかどうかによって 29.97 fps(ドロップフレームあり)または 30 fps(ドロップフレームなし)のどちらであるかが解釈されます。この2つの形式は標準規格として使用されているので、この解釈は通常は適正なものとなります。

    「MTC フォーマットを自動認識」オプションは、29.97 fps(ドロップフレーム)か 30 fps(ノンドロップ)のいずれかに設定されたことがある場合は、これらのいずれかにしか切り替えません。これ以外の一般的でないフレームレートに「Logic Pro」を同期させたい場合は、手動で定義する必要があります。この設定は、「MTCフォーマットを自動認識」オプションを選択しても変更されません。

  • 「MTC を確認」ポップアップメニュー: 「MTC を確認」ポップアップメニューでは、同期の整合性を維持するために、受信するタイムコードをどの程度の頻度でチェックするかを指定できます。通常、このオプションは「常に」のままにしておきます。

    機器によっては、同期を維持するために一定のフレーム数の設定を必要とするタイムコードパルスを生成するものもあります。「確認しない、ジャムシンク」オプションを選択すると、同期信号が失われたときに「Logic Pro」の同期が解除されます。つまり、同期パルスが失われると、「Logic Pro」は内部クロック(最後に受信したテンポに設定されています)に従って動作します。これにより、たとえタイミングパルスが失われても録音そのものは継続されることになります。

  • SMPTE オフセット(上の「小節の位置」): ここでは、プロジェクトのSMPTEオフセットを設定します。曲は必ずしも先頭の小節から始まるとは限らないので、設定したSMPTEタイムで再生される小節は任意に選択できます。

    デフォルトでは、小節 1 1 1 1 が SMPTE 01:00:00:00 に当たります。

    SMPTEオフセットには通常、01:00:00:00(1時間)が使用されますが、これは、タイムコードをプリロールできるようにするためです。

  • 「SMPTE 表示のオフセットを個別に設定」チェックボックス: 実際の SMPTE タイムではなくプロジェクト開始からの絶対時間を表示する場合は、これを選択します。
  • SMPTE 表示オフセット(下の「小節の位置」): これらのフィールドは、「SMPTE 表示のオフセットを個別に設定」チェックボックスを選択した場合に操作可能になります。「小節の位置」を「1 1 1 1」、「SMPTE 値を表示」を「00:00:00:00」(プリセット)にします。必要に応じ、別の表示オフセット値を設定することもできます。

    テンポリストには常に実際のSMPTEタイムが表示され、SMPTE表示オフセットが表示されることはありません。その他のすべてのウインドウでは(トランスポートバーも含め)、SMPTE 表示オフセットが使用されます。

    ヒント: ビデオ(およびオーディオ)のポストプロダクション現場では多くの場合、SMPTE オフセットを 1 時間(01:00:00:00)に設定しています。これにより、プリロールが SMPTE 時間 00:00:00:00(ミッドナイト)を通過する際に、テープマシン(ADAT など)によってはトラブルとなる可能性を回避できるからです。

「同期」設定の「オーディオ」パネル

オーディオと MIDI トラックの同期を維持するには、「同期」プロジェクト設定の「オーディオ」パネルのパラメータを使います。

Figure. Audio pane of the Synchronization project settings.
現在の同期状況の設定
  • 「MTC」スライダ: このリアルタイム表示には、受信した MTC とその公称フレームレートとの間での差が表示されます。この差が大きすぎる場合は、「同期」プロジェクト設定の「一般」パネルで適正なフレームレートが設定されていることを確認してください。確信が持てない場合は、フレームレートを 24 fps に設定して「MTC フォーマットを自動認識」オプションを選択してください。フレームレートが正しい場合、この表示を使ってマスター機器のテープ速度を公称値(タイムコード記録時の速度と同じ値)に調整できます。スライダが中央に位置するようにマスター機器のピッチコントロールを調整してください。
  • 「サンプルレート」スライダ: ここには、サンプルレートの公称値からの偏差が表示されます。一部のオーディオハードウェアには、サンプルレートが固定されているものもあるので注意してください。
  • 「偏差」スライダ: ここには、タイムコードマスターからのワードクロックの位相偏差、つまり、オーディオ信号とMIDI信号間の偏差が表示されます。ハードウェアの同期モードを「MTC コンティニュアス」にしてタイムコードを変化させてみると、「Logic Pro」がどのようにサンプルレートを調整するかを見ることができます。タイムコードを大きく変動させても、オーディオとMIDIとの同期で偏差は生じません。ただしこれには、サンプルレートの連続的な変更が可能なオーディオハードウェアが必要です。MIDIはタイムコードマスターの後に直接付いていくことができる(また付いていく必要がある)ので、オーディオ信号とMIDI信号間の多少の偏差は避けることはできません。

    メモ: 「Logic Pro」ではリアルタイムでサンプルレートを変換できるので、適正なオーディオ再生ピッチと速度を維持したまま外部 MTC 信号に従うことができます(MTC コンティニュアス)。これは、MTC スレーブモードで録音している場合でも同様です。

オーディオ同期状況の設定

「同期」設定の「MIDI」パネル

「MIDI」パネルでは、「Logic Pro」が再生または録音モードのときの MIDI 経由でのタイムコード送信に関する設定を行います。このパネルにより、マスターとして機能する「Logic Pro」に対して外部スレーブ機器を同期できるようになります。

Figure. MIDI pane of the Synchronization project settings.
「MIDI クロック」設定
  • 「MIDI クロックを送信」の 「送信先 1」チェックボックス: MIDI クロックの送信を有効にできます。

    再生および録音を開始すると、ソング・ポジション・ポインタ(SPP)メッセージが送信されます。SPP を処理できない機器もあるので、MIDI システムのリアルタイム・コンティニュー・メッセージも送信されます。ただし、開始位置が 1 1 1 1 のときは例外です。この場合ははリアルタイム・スタート・メッセージが送信されます。

    MIDI クロックは、その他の一般的な MIDI イベント(ノート、コントローラなど)と一緒に簡単に送信できます。複数のポートを備えたMIDIインターフェイス(Unitor8などの)を使用する場合、個々のポートではなく、すべてのポートに対してMIDIクリックを送信した方がより正確なタイミングを得ることができます。

    すべてのポートに対してMIDIクロックが転送される場合、イベントは1回だけコンピュータからインターフェイスに送信されます。一方、個別のポートに送信する場合は、ポートごとにイベントが送信されるので、すべてのポートの帯域幅に対する負荷も高くなります。

  • 「MIDI クロックを送信」の 「送信先 2」チェックボックス: MIDI クロックの送信を有効にできます。詳しいことは上で説明しています。
  • 「トランスミッションの遅延時間」スライダ: MIDI クロック信号の転送を遅延させることができます。マイナス値を指定すれば、MIDIクロック信号がより早く送信されることになります。これにより、外部 MIDI クロックスレーブで発生した反動遅延を補うことができます。
「MIDI タイムコード(MTC)」設定
  • 「MTC を送信」チェックボックス: MIDI タイムコードの送信が有効になります。
「MIDI マシンコントロール(MMC)」設定
  • 「MMC を送信」チェックボックス: このチェックボックスを選択すると、MIDI マシンコントロールの送信が可能になります(MIDI マシンコントロールを参照してください)。これらのコマンドは、「Logic Pro」のトランスポート機能(再生、停止、巻き戻しなど)を実行するたびに送信されます。

    MMC は通常、「Logic Pro」が外部マスター(ADAT など)のスレーブとして動作しているときに、外部マスターのトランスポート機能を「Logic Pro」から制御したいときに使用します。つまり、「Logic Pro」が MMC マスターと MTC スレーブの役割を同時に果たすことになります。外部マスターのトランスポートコントロールを使用したい場合、MMCを使用する必要はありません。この場合、「Logic Pro」はスレーブとして MTC マスターに従います。MMC を使って、MMC スレーブ機器のトラックを録音可能な状態にすることもできます。

  • 「MMC の入力を自動認識」チェックボックス: 「Logic Pro」を MMC(MIDI マシンコントロール)といわゆるフル・フレーム・メッセージによって制御するときは、このチェックボックスを選択します。

    MMC 入力を自動認識している「Logic Pro」では、次のコマンドを認識できます:

    • 再生

    • 遅延再生

    • 停止

    「遅延再生」は、リール式テープレコーダのように構造的に遅延が生じやすい同期スレーブ機器用の特殊なコマンドです。即座に再生を要求するのではなく、指定したSMPTE位置まで到達してから再生を開始するように要求します。「Logic Pro」はどのような位置でもほとんど瞬時に到達できるので、再生コマンドと遅延再生コマンドへの反応時間の違いが認識されることはありません。

    外部 MTC(MIDI タイムコード)コマンドの入力が検知された場合、「Logic Pro」はこれらのメッセージを無視します。

    「Logic Pro」はフル・フレーム・メッセージにも従うので、再生を開始しないで再生ヘッドを新しい位置にセットすることもできます。なおここでも、情報が競合した場合はMTCデータが優先されることになります。

    同期装置の中には、スレーブ機器(この場合は「Logic Pro」)を再生することなく新しい位置にセットしたいときにフル・フレーム・メッセージを(MTC の代わりに)送信するものもあります。これは、ビデオ機器をシャトル操作したりフレーム単位で進めたい場合などに、スレーブ機器が再生モードになることなく正確な位置にセットされるので便利です。

その他の MIDI 設定

「同期」設定の「Unitor」パネル

「同期」プロジェクト設定の「Unitor」パネルは、Unitor8 MIDI インターフェイス用の主な同期パラメータを設定するときに使用します。

Figure. Unitor pane of the Synchronization project settings.
「一般」設定
  • 「SMPTE モード」ボタン: Unitor8 で SMPTE データをリードまたはライトするように指示することができます。
    • 「リード」モード: SMPTE データを読み取る場合に選択します。
    • ジェネレート: SMPTE データを書き込む場合に選択します。
  • 「SMPTE モード」の「更新」チェックボックス: 更新モードが有効になり、受信したタイムコードと同期する新しいタイムコードが生成されます。更新モードは、VITCとLTCのどちらでも動作します(下記参照)。LTC トラックをコピーする場合は、更新モードを使用してください。LTC を直接コピーすると、必ず品質が低下します。マルチトラックのテープ全体をコピーする場合は、すべてのトラックを直接パッチするべきですが、タイムコードトラックの更新はUnitor8から行いましょう。

    メモ: 更新モードは、タイムコードをコピーする場合にのみ使用します。

  • 「SMPTE タイプ」ボタン: ここでは、使用する SMPTE の形式を定義します。
    • LTC: LTC(Longtudinal Time CodeまたはLinear Time Code)がテープトラックに書き込まれます。
    • VITC: VITC(Vertical IntervalまたはVertically Integrated Time Code)がビデオテープの見えない部分に書き込まれます。
    • オフ: タイムコードは書き込まれません。
  • 「フリーホイール」スライダ: LTCとVITC用のフリーホイール時間(フレーム数単位)を設定することもできます。「フリーホイール」パラメータは、SMPTEリーダーに対して、読み取るタイムコードがなくなってもどれぐらいの時間同期装置からシーケンサーにMTCを送り続けるのかを指定するものになります。

    フリーホイール時間を長くすると、タイムコードが欠落しても同期を維持できますが、タイムコードマスターが停止した後に「Logic Pro」がそれを認識するまでの時間も相応に長くなります。必要最大限の長さ(操作の持続目的)で可能な限り小さな値(待ち時間を少なくするため)に設定するようにしましょう。

「タイムコードディスプレイを表示」設定
  • 「横位置」および「縦位置」スライダ: ビデオ画像に書き込まれるタイムコード・カウンタ・ウインドウの位置を設定できます。