Surround Panner を使って作業する

Surround Panner を使用すると、トラックの出力信号を特定のスピーカー位置に配置できます。Surround Panner は、ミキサーやアレンジ領域のチャンネルストリップで直接操作することもできますが、独立したウインドウで開いた方がはるかに便利です。

「Surround Panner」ウインドウを表示するには
  • チャンネルストリップのサラウンドパンポットをダブルクリックします。

「Surround Panner」ウインドウにはチャンネルストリップよりも大きなサラウンドパンポットが表示され、いくつかの拡張パラメータも表示されます。

同時に複数の「Surround Panner」ウインドウを開き、これらをスクリーンセットに保存することもできます。また、「Surround Panner」ウインドウにはリンクボタンも用意されています。リンクを有効にした場合、選択したチャンネルストリップのサラウンド設定を変更すると、「Surround Panner」ウインドウの表示もアップデートされます。

Surround Panner は、モノラル入力/サラウンド出力(モノ->サラウンド)の場合とステレオ入力/サラウンド出力(ステレオ->サラウンド)の場合では機能が異なります。入出力チャンネルともサラウンドの場合はバランスコントロールとして機能します。

モノ->サラウンドの Surround Panner を使う

ソース入力がモノラルに設定されている場合は、モノ->サラウンドの Surround Panner が表示されます。

Surround Pannerでまず目につくのが、サラウンド空間の表示です。ここでは、入力信号からスピーカー出力へのサラウンドルーティングを調整します。サラウンド空間の下部に表示されるレベルスライダとフィールドでは、センターとLFEチャンネルのレベルを個別に調整できます。拡張パラメータは、チャンネル間のセパレーションの微調整に使用します。

Figure. Mono to Surround Panner window.
サラウンド空間

サラウンド空間は以下の要素で構成されます:

  • 「Angle」と「Diversity」の2つのリアルタイム表示フィールド。この2つのフィールドの値は、マウスをスライダのように使って直接変更できます。

  • 4 つの同心円で構成され、45 度ずつ 8 つのセグメントに分割された円形グリッド。最も外側の円がダイバシティの最小値を、最も内側の円がダイバシティの最大値を表します。

  • 円形グリッドの外側を囲むもう1つの円。この円が、実際にダイバシティ/アングルを示すディスプレイ(またはダイバシティ/アングルメーター)です。ダイバシティ(またはアングル)が変化すると、この円の一部が強調表示されます。

  • 円形グリッドに重なる四角形。これはLとR、およびフロントとリア(サラウンド)のチャンネルセパレーションを表します。この四角形の四隅または四辺をドラッグすると、形を変えることができます。「Surround Panner」ウインドウの下部にあるスライダまたはフィールドでセパレーションの値を変更しても、同じことができます。

  • 円形グリッドの外側に配置されたスピーカーのアイコン。「Surround Panner」ウインドウでスピーカーのアイコンをクリックすると、チャンネルのサラウンドフォーマットを直接変更できます。こうして各チャンネルを個別にアクティブ/非アクティブに変更できます。青で表示されたスピーカーがアクティブなチャンネルで、グレイのスピーカーアイコンは非アクティブなチャンネルを表します。

  • スピーカー出力への信号のルーティングを制御する青いドット。この青いドットはサラウンド空間内でドラッグできます。

サラウンド位置を示す青いドットをドラッグする際は、以下の機能を使うと便利です:

  • コマンドキーを押しながらドラッグするとダイバシティがロックされます。

  • コマンド+Optionキーを押しながらドラッグすると、アングルがロックされます。

  • Optionキーを押しながら青いドットをクリックすると、アングルとダイバシティがリセットされます。

レベルコントロール

「Center Level」スライダとフィールドは、フロントのセンターチャンネル(主に映画やテレビの台詞に使用)の音量調整に使用します。

「LFE Level」スライダとフィールドは、LFE 出力の音量調整に使用します。「LFE」とは「Low Frequency Enhancement」または「Low Frequency Effects」の頭文字をとったもので、LFE 出力はサブウーファーチャンネルに送られるのが一般的です。サブウーファースピーカーは必須の機器というわけではないので、なくてもかまいません。

ヒント: 低周波の信号のみを出力に送りたい場合は、マルチモノのサラウンドEQをサラウンド・マスター・チャンネルに挿入します。これを使用してLFE(またはサブウーファー)出力を設定します。多くのサラウンドアプリケーションでは、カットオフ周波数を 120 Hz にするのが標準的です。

セパレーションコントロール

「Surround Panner」ウインドウの下部にあるスライダは、各種チャンネル間のセパレーションの量を指定するのに使用します。これらのパラメータの値を「1.00」から離していくと、サラウンド空間のセパレーションを示す四角形が(台形または長方形に)変化し、チャンネルへの影響を視覚的に確認できます。

  • Separation XF: フロントのLとRチャンネルのセパレーションを設定します。セパレーションの値を「1.00」から「0.00」に下げていくとLチャンネルとRチャンネルの信号が相互にミックスされ、最後には両方のチャンネルの出力がモノラルになります。
  • Separation XR: リアのLsとRsチャンネルのセパレーションを設定します。基本的な動作は上記の「Separation XF」と同じです。
  • Separation Y: フロントとリアのチャンネル(すなわちリスニング位置の前後)のミックスを調整します。LとLs、RとRsのチャンネルがそれぞれミックスされます。「Separation Y」を「0.00」に設定すると、フロントとリアの両方のチャンネルの出力がモノラルになります。

拡張パラメータのセクションが開いている場合は、セパレーションを示す四角形も常に表示されます。拡張パラメータのセクションが閉じていても、いずれかのセパレーションの値が「1.00」以外に設定されている場合は四角形が表示されます。この場合、四角形をマウスで操作してセパレーションの値がデフォルト値に戻っても、四角形の表示は消えません。すべてのセパレーションの値が「1.00」に設定された状態で拡張パラメータのセクションを閉じた場合のみ、四角形は非表示になります。

拡張パラメータのセパレーションの値またはスライダ、あるいはセパレーションを示す四角形の辺を Option キーを押しながらクリックすると、デフォルトの値にリセットされます。

メモ: 7.1 ITUサラウンドフォーマットの場合、LmとRmチャンネルのセパレーションは、フロントチャンネルとリアチャンネルのセパレーションの値の平均値になります。

ステレオ -> サラウンドの Surround Panner を使う

ソース入力がステレオに設定されている場合は、ステレオ->サラウンドの Surround Panner が表示されます。

この Surround Panner はモノ->サラウンドの Surround Panner とほぼ同じものですが、L(左)信号用と R(右)信号用のパンパック、そして L と R のパックをグループ化して同時に調整するためのパンパックの、合計 3 つが表示されます。また、右上隅にはステレオ信号の広がりを調整するための「Spread」フィールドも表示されます。

Figure. Stereo to Surround Panner window.

サラウンド空間内で L または R のパックを移動すると、もう 1 方のパックも対称位置へ移動します。3番目のパックをドラッグすると、LとRの両方のパックが現在のスプレッドを維持したまま移動します。

パックを左右に動かすと両方のアングルが変化し、上下に動かすとダイバシティが変化します。パンポット外周上のバーは、それぞれの信号ソースがどのスピーカーによって再生されるかを示しています。パックを中心に近付けると、対応するバーが長くなります(つまりダイバシティが大きくなります)。

Surround Balancer を使う

ソースがサラウンドに設定されている場合は、サラウンドパンポットが Surround Balancer コントロールの役割を果たします。

Figure. Surround Balancer window.

ソースチャンネルはクロスパンまたはミキシングされることなく、対応する出力チャンネルにそのまま送られます。パンコントロール用のパックは1つだけで、これを使ってマルチ・チャンネルのソース信号全体を調整します。つまり、ソース信号の音量の相対的なバランスのみが変更されます。

Surround Balancer モードでは、セパレーションパラメータは使用できません。